山田詠美『ひざまずいて足をお舐め』
- 作者: 山田詠美
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1991/11/25
- メディア: 文庫
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本書はことのほか山田詠美節が満載で楽しめた。彼女の作品ではあまり見ないタイプの,だらだらした文体。といっても実のところ,本書において独白というスタイルそのものには必然性がないように思う。あくまで普通の文体に置換可能な形で書かれているからだ。作家はなぜこのようなスタイルをとったのか。他人の視線に徹し,突き放して書きたかったのかもしれない。そして,やはり読みどころは忍姉さんとちかの,あえて自分の傷口を触ってみるような会話。哲学的シビアさが光る。山田詠美の小説はいつも読者の内面に痛みの体験を強いる。
人間自体にアクあっちゃ駄目なんだよ。それは,嫉妬をはじめとする,色んなベクトルの方向をまちがえてる人。モノを創る人ってさ,アクが強くなきゃって思いがちじゃない? でもさ,本当はそうじゃないと思うね。創るものにそのアクが出てりゃいいじゃない。(p.194)