それがあんたの実力なのよ

テレビをつけたら沢村一樹のインタビューをやっていた。

結構面白かった。4週連続なのか!
沢村がまだ俳優になりたての頃の話である。あるドラマの撮影で,カメラチェックでモニターの自分の演技を見ている最中,「あー,もっとこうすればよかった」などとしきりに後悔していた。そしたら共演者(戸田恵子)が
「なに後悔してんのよ。それがあんたの実力なのよ」
と言ったという。それで沢村はたいへんに納得した。ガーーーン,ときて,なんだかすっきりしたという。
きびしい指摘である。でもたぶんそうなのだろう。自分に実力がないのだ…という点は自分では見て見ぬふり,どころか,意識にのぼらないことさえある。客観的意見とはおそろしいものだ。考えてみればなんで人間って,自分を擁護したがるんだろう。自分では卑下しているつもりでも,それはじつは自分の中で「卑下してOK」なポイントを卑下しているだけで,肝心なところはやっぱりゆずらない。気が弱くて人には反論できなくても,自分の中ではなぜかゆずれないポイントというのがある。でもそれは往々にして根拠がない。ああ。そこで忌憚のない意見をいわれると,「ですよねー」と即座に擁護撤回! せざるをえなくなってしまうのだった。
(ところで,それはそれとして,思うのは,後悔ってそんなに悪いことか。後悔して改善できるなら別にいいじゃないの,しょうがないじゃないの。)
沢村はモデルから転身して俳優になり,二枚目の役ばかりでなんだかおもしろくない,と思っていたそうだ。でもそれは自分がそういうイメージを出していたからだということに思い至り,バラエティー番組などで「下ネタ解禁」した。そこがいわば転機で,いろいろな役をもらえるようになったという。そしてセクスィー部長へ。あのわけのわからん間(ま)をはじめ,半ばアドリブで楽しんでいるとのことだった。
それにしても,ほうぼうで聞く「相当な下ネタ好き」という評判のせいで,しゃべっている沢村の頭の中にはいかようなものが渦巻いているのか…といったことを考えざるをえなくなってしまう。こういう乖離のある人はへんなおかしみがにじみ出るなあ。