万城目学『鴨川ホルモー』の校正ミス?

ところで『鴨川ホルモー』であるが、校正のミスと思われる箇所が散見され、ちょっと看過できない。単行本を出した産業編集センターが悪いのか、文庫化した角川書店が悪いのかは知らない(前者かな?)。自分で読んだら気づかなそうなものが多いので、作者だけの責任にするのはかわいそうだ。

彼女は「もう、いいから」「だから、いいって」などと意味不明の答えを返してくるばかりで、刻一刻と深い眠りに陥っていたことは、そのうち一切の返答を拒否するようになったところからもうかがえた。(p.48)

「刻一刻」はこういう場合は不自然ではないか。「ひと時も停滞すること無く様相が変化し続けることを表わす。/時間の経過と共に、事態が緊急の度を加えることを表わす。(新明解国語辞典第5版)」ここでは様相が変化するわけでもなく緊急でもない。

みんみんと油蝉がけたたましく鳴き立てる、前期最後の体育の授業後だった。(p.63)

みんみんはミンミンゼミ。油蝉の鳴き声はジイジイである。

まるで一年前のデ・ジャブだな、と心でつぶやきながら、俺はもう一度あたりを確認した。(p.213)

デジャブはdéjà vuなのでデジャ・ブと切るべきだろう。

もちろん、少しでも俺と芦屋とのわだかまりを解そうとする、スガ氏の意図はわかる。(p.237)

「解(かい)する」に「解く」という意味があるのだろうか? 手元の辞書では見つけられなかった。「解(ほぐ)す」と読めばいいのでは、とコメントで教えてもらった。なるほど。

何ちゃってねエヘヘ——湿った空気に漂う、乾いた雰囲気を紛らわそうと(p.246)

「なんちゃって」を「何ちゃって」と書くのはおかしい。「なんて」は「などと」の変化である(新明解)ので「なんちゃって」もそれと同類のはず。しかし、なんちゃってとはまた古風だ。