サイモン・シン『宇宙創成』読了

宇宙創成(上) (新潮文庫)

宇宙創成(上) (新潮文庫)

宇宙創成(下) (新潮文庫)

宇宙創成(下) (新潮文庫)

端的にいって,聖書の「光あれ」はビッグバンという形で現実に起こっていたらしいことが明らかになった。そして神は,自身の行いのよき説明者もまたおつくりになった。すなわちサイモン・シンその人である。とまあ無駄口はともかく,今回も彼の圧倒的な筆力にただただ感心するばかりであった。なんなのこの人。原題は"Big Bang"であるが,話は古代ギリシアから始まる。同時代に身を置いた複数の天文学者のかかわり合い(というより,すったもんだ)を読めば,宇宙論がつねに論争とともにあったことがわかる。本作はその論争の渦中をまさに「渦中」らしく描き出しており,スリリングかつ感動的。数式はほとんど出てこないとはいえ,必要なら煩雑さもいとわないというのも好感がもてた。青木薫氏の翻訳もすばらしい。
(2010/03/14記)