事業仕分け

改革派の政治家や首長は「それは民間では通用しない」などとよく言うが,今となっては民間人のほうが「それは事業仕分けでは通用しない」とか使いたくなりますね。まあ冗談はともかく,これがただのパフォーマンスでなければいいなと願っています。政治も行政もどんどん分かりやすくなっているのに,不安ばかりがいや増すというのはどうしたわけだろう。
学術分野にかんする仕分けについては悪いことばかりではないと思っている。スパコンについての「2位ではだめなのか」発言はちょっと度肝を抜く感じだったが,少なくともこれはたんなる愚劣で的外れな質問ではなくて,ある意味では非常に鋭い。よく考えると結局「何のために世界一を目指すのか」というごくまっとうなことを聞いているわけで。それに対してどういう返答があったのか詳しく調べられてはいないのだが,ここはぜひ胸を張って回答すべきだと言える。とはいえ実際のところ,こんな聞き方をされる立場だったら「うへえ」って感じだが。
話はずれるが,大学に6年間いて分かったのは,自分の研究の意義,何のためにそれを研究しているのか,をふつうの人にきちんと説明できる研究者は(とりわけ「文系」では)案外少ないということ。しかも研究をしているとだんだん「ほかの人に分かってもらえない」ことに慣れてしまうのがいけない。すべての研究者は常に,これまで世界中でだれもやったことのない研究をしているのだから,内容も意義も分かりにくいのはあたりまえである。自分の中で完結して満足ならばけっこうだが,世の中に対してすこしでもコミットしたいならば,理解してもらう努力を怠ってはならない。仕分けの話につなげると,そういうわけで,文科省の担当者は何のための研究かということを十分理解する必要があるのではないか。少なくとも何も分かってないような仕分け人を説得できるくらいには。研究者も,仕分け人の発言がとんでもないと感じるのならば,今からでも血眼になって反論しなければいけない。