シェイクスピア『ロミオとジュリエット』

ロミオとジュリエット (新潮文庫)

ロミオとジュリエット (新潮文庫)

帰省して何読んでんすかという感じだが,読了。悲しい話だなあ。月明かりのバルコニーの超有名な場面もいいが,ジュリエットが薬を飲む直前に躊躇する長い独白なんかもぐっとくるものがある。こういうところのセリフはどれもおそろしく大げさなのに,わざとらしくなくむしろ悲劇を盛り上げているのがすごい。
ところでこの中野好夫*1は昭和26年11月の発行で,かなり古めかしい。マキューシオなどは江戸っ子風に訳してあって,なんだか不思議な感じがする。でも地口が日本語にちゃんと置き換えてあってすごい。
読んでいて吹き出しそうになったのが以下の部分。乳母(Nurse)のセリフで,原文は

Come Lammas-eve at night shall she be fourteen.
Susan and she--God rest all Christian souls!--
Were of an age: well, Susan is with God;

http://shakespeare.mit.edu/romeo_juliet/romeo_juliet.1.3.html

これが

[...]お嬢様が十四におなり遊ばすのが,ちょうど,
その八朔の晩でございますよ。そう申せば,私の娘のスーザン――やれやれ,ナムアミダブ,ナムアミダブ――
あれがちょうどお嬢様と同年でございましてね。ああ,あれも神様のお召しに与りましたが,
(pp.36-37)

ナムアミダブて! 日本人か!
巻末の訳者解説も結構面白かった。当時は無背景の舞台で演じられ,そのぶんセリフの詩に聞き入る感じだったらしい。セリフが詩情たっぷりなのはそのため。それと,当時は女性の役はすべて声変わり前の少年俳優が扮していたらしい。知らなかった。

*1:そういえば中野訳のスウィフト『ガリヴァ旅行記』(新潮文庫asin:4102021019)はかっこいい翻訳なのでおすすめである。