「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」

「破」を観てきました。すごい! こんなのを作ってしまう,そして鑑賞できてしまうわれわれ日本人はやはり未来を生きているに違いない。楽しんだというよりほとんど説得されたような2時間。しばし絶句して映画館を出た(まあ1人だったのでそれから家に帰るまで終始絶句していたわけだが)。
母性というやつは人間にとって永遠のテーマなんだと思う。エヴァパイロットは母親のいない子どもに限られている。以下,テレビ版の終盤を未見の私が勝手なことを言うが,L.C.L.で満たされたエントリー・プラグは胎内になぞらえられる。エヴァに乗り込んだパイロットがなぜかそこを「落ち着く場所」と認識してしまう。「シンクロ率」の上昇は自然のなりゆきだけではなく,パイロット側からの無意識の働きかけも作用している。エヴァに「乗る」とは言うが,実のところエヴァは乗るものというよりパイロットと一体化するものなのであり,それは母性のある一面を究極的に体現している。
くわえて,あんなにメカメカしい内容であるにもかかわらず「身体」を強く意識させられてしまうのも巧みである。エヴァの動きは実にしなやかに描かれているし,なにより例の赤い液体が血液を想像させるので,出てくるたびにどうにも血なまぐさいにおいが漂ってくるようで,思わず体をこわばらせてしまう。私自身はそういう体験を経て作品に引きつけられていっているように思う。
次回作もぜひ観ます。それまでに旧作を勉強しておこう。