ごく個人的な,感動的おすすめ本(おもに人文系大学生むけ)
学部4年間と大学院2年間で,実はあまり本は読まなかったが,何冊か感動的な本に出会った。すでに感想は書いているものばかりだが,いい機会なのでまとめて紹介する。単なる私の趣味だけど,何かの参考になれば。
- 作者: 金水敏
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/01/28
- メディア: 単行本
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このような言い回しを「役割語」と名づけ,ルーツをたどる。江戸〜明治〜現代という時代差,方言,性差や社会階層,ピジン,そしてメディア,文化といった多くの要素が,ときに重層的に関与している。ひとつひとつが平易に解説されており,まったくの一般書として面白く読める。すごい。
- 作者: 佐藤信夫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1992/06/05
- メディア: 文庫
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ところがそうでもないのである。「のような」があるおかげで,とんでもない創造性を生むことがあるのだ。どういうこと? ここで答え合わせは,したくない。とにかく第1章「直喩」を読まれたし。
レトリックはたんなる飾りではなく,むしろ,より正確な表現へ至る手段でもある。レトリックの不思議に読者とともに驚き,とまどいながら進む,鮮度の高い文章が魅力的だ。
同じ筆者のものに『レトリック認識』(講談社学術文庫,[asin:406159043X])。
ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む (ちくま学芸文庫)
- 作者: 野矢茂樹
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/04/01
- メディア: 文庫
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『『論理哲学論考』を読む』という本を読んでも,『論理哲学論考』を読んだことにはならない。当然のことである。[...]しかし私としてはそこを曲げて訴えたい。本書を読むことは,『論理哲学論考』を読むという体験でもある。つまり,私が開講する「『論理哲学論考』を読む」というゼミに参加するような体験を,本書で味わっていただきたい。 (p.13)
さりながら,本書を読むならぜひ,『論考』に先に目を通そう。おそるべき著作である。通読しなくとも構わない(私は通読した。しんどかった……)。大海に放り出されたような「分からない」体験は重要である。そして,なんだかグッときた場所があったら線を引いておくべきである。『『論考』を読む』を読んでしまうと,もう「分からない」には戻れないのだから。
実はこのあいだじゅう本書を再読していた。何度読んでもスリリング。随所でみられる批判的検討も,全体に通底するウィトゲンシュタインへの大きな共感あってのものである。
『論考』は岩波文庫で野矢訳が出ている(asin:4003368916)。